ライターは真夜中に目を覚ます。

ライターで一本立ち日記。猫飼ってます。バンドやってます。たまに高校生男子のお母さんやります。

最相葉月さんの「仕事の手帳」を読んで「いてもたってもいられななくなった」

図書館で手に取った1冊が『仕事の手帳』

面白そうな本はないかなと、図書館の書架を眺める時間が好きです。すでに借りたい、読みたい本に突進していくのとは違う、自分の気分で好きに選んでいいという楽しみがあります。

さりげなく手に取った本が面白かったときは、本当にうれしくなります。先日借りた最相葉月(さいしょう はづき)さんの『仕事の手帳』がまさしくそれでした。

徹底的に、そして細部にわたってていねいにインタビューし、取材して一冊の本を作り上げていく作者の姿勢に心打たれ、一気に読んでしまったのです。

師匠もなく人脈もなく、不器用でと自分で書かれているけれど、書きたいというぶれない気持ちや心が相手を揺さぶり、本音を引き出すのだ、ということを改めて認識しました。

 

最相葉月さんの『絶対音感』を読んだのは何年前だったか、引き込まれるように読んだ覚えがあります。ワインバーで耳にした「絶対音感」という言葉に疑問を抱き、いてもたってもいられず取材を始め、ひたすら取材し書き続けた『絶対音感』この本は第4回 小学館ノンフィクション大賞を受賞します。

 

実際絶対音感が出版されてすぐ、買って読みました。こんな世界があるのか、と絶対音感に引き込まれた覚えがあります。

いてもたってもいられないことがあるか

「いてもたってもいられない」という気持ちに動かされ、人脈やつてがなくてもなんとか取材する糸口を探していく。糸口を見つけたらどんどん手繰り寄せていく、というのは才能もそうだけれど「いてもたってもいられない」という衝動が何かを突き動かすのです。

最相葉月さんは、「自分に肩書がない」と『仕事の手帳』の最初に書いています。確定申告の職業欄は「文筆業」とのこと。これだけ著書があり実績があるのに、肩書がないと。

ここで自問自答します。フリーライターを名乗っているけれど何のフリーライター?と。自分の伝えたいこと、自分が知りたいこと、書きたいことを書いて、誰かの心を揺さぶっているか?と。自分が揺さぶられないと、人の心を揺さぶることはできないのではないかと今更ながら思い至りました。

自分のいてもたってもいられないことを表すのは俳句も同じ

俳句を作る時も同じです。「ああ!」という感動を五七五で表すことが俳句を作る際にもっとも大事なことです。何かの風景に出会って、例えばそれがとんぼが水に触れるだけの光景だとしても、心揺さぶられ、いてもたってもいられなくなったら俳句になります。たとえ俳句として「うまくない」としても読み手には何かが伝わるのです。自分が感動していない、単なる事実を並べただけでは、人の心に染みわたりません。

 

「いてもたってもいられないようなこと」を追求していくこと。お金にはならないかもしれないけれど、大げさかもしれないけれど、こういうのが生きているということではないか、と思うのです。